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ポーズの定理: 1-9『ポーズの定理』

ポーズの定理: 1-9『ポーズの定理』

本記事は書籍『描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理』の抜粋記事です。

漫画家の篠房六郎先生が、研究をかさねた美しいポーズの定理について、基本理論を説明するプロローグとチャプター1をご提供いただきました。

今回はチャプター1のセクション9の内容を紹介していきます。


ポーズに記号をつけるポイントと利点

記号を元に、その条件を満たすポーズを自分で描き起こしてみるのはもちろん色々と勉強になりますが、同時に、実在の人間の写真や動画を分析して自分で記号を付けて見ることもまた、違った角度からの勉強になります。

記号の効果

[連続した動作を分解して記号を付ける]

記号付けが実際に絵を描くときに便利に機能する例を挙げます。例えば、回し蹴りの場面を漫画で描きたいときはまず、一連の動きを分解します。構えた状態(1)から、左足に体重をかけ、上半身を左に倒し始めます(2)。上半身を倒したことで右足が自然に上がりますが(3)、このままでは左に倒れてしまうので、Cの立ち直り反応が起こり、前屈しつつ上半身が再度起き上がり(4, 5)敵に蹴りを叩き込みます(6)。蹴り終わった後は背骨を反らせて全身の回転を止めています。この一連の図を元に 3 と 6 をピックアップして試しにアクションシーンを描いてみようと思いますが、記号をよく見ると背骨が 3 で反っていたのが 6 で前屈していることが分かったので、この情報を元に、背骨の動きが良く分かるような描写に挑戦しようと思います。

[実際に漫画のコマに落とし込む]

コマ割りをする際、体の正中線(赤い点線部分)がなるべく画面に大きく入るようなレイアウトにして、背骨の動きが良く見えるような工夫をしました。キックのシーンであるにも関わらず、実は蹴り足自体はあまり画面に入っておらず、ざっとしか描いていません。このように、蹴り足を描かなくとも、動きの起点となる背骨の動きを主に捉えるだけでもかなり迫力のあるアクションシーンを描くことができます。様々なポーズに背骨の状態を表す記号が必ず付いていることの利点がこれで分かっていただけたのではないでしょうか。

ポーズを捉えるポイント

自分で写真や動画に記号付けをすると、分類をすることによって、頭の中が整理され、ポーズに対する理解が深まる利点があります。ただ、気をつけてほしい点は、優先して参照すべき資料は実体験→映像・動画→連続写真→イラストの順番になることです。イラストや連続写真には人為的な解釈が入り込む余地があり、制作者のミスがある可能性もあるからです。では本書はどうなんだ?と思われるかもしれませんが、とにかく頑張ってみてはいます。その前提で、動画のキャプチャーを参考資料にするときの注意点を5つ挙げておきます。

1. 最も大きく振りかぶったり、振りぬいたところを捉える

思い切り振りかぶったり、振りぬいた動きの最も大きくなる瞬間を捉えないと、図だけを見た人に「ここまでしか動かない技なのか」と思われるので最大限に動いたところを押さえましょう。

2. ステップした瞬間を捉える

片足を踏み出し勢いよく着地する、いわゆる立ち直り反応によって体勢も大きく変わるので、押さえておくべき重要なポイントになります。ただし、軽く片足を地面に着いただけだと、軸足は入れ替わらないので絶対に姿勢が変わるとは断言できません。なのでステップ前後の姿勢は特によく観察してみて下さい。

3. 背が反っているのか、前屈しているのかは見た目だけで判断しない

前屈したBパターンの姿勢でも、大きく体をひねれば意外と反って見えるなど、ポーズを見分けるのは実は意外と難しいものです。武術で袴などを着られると特に、です。右図は特に自分で混同することの多かった2つです。見分け方は、CHAPTER6の水平回転の理論に基づき、背骨の水平回転がより合理的に行われるものを選択し、実際自分でもそのように動いてみることで確かめました。

4. 類型の動作を探す

これは数をこなさないとなかなか気づきにくいものですが、差し当たっては本書で似たような動作がないか探して共通点を探ってみてください。全く別ジャンルの動作が、実は共通していると分かるのもなかなか知的興奮があるものです。

5. Cパターン以外の姿勢であれば、左右の肩が水平に見えても必ず上下を決めて記号をつける

厳密に言えば、安定したパターンから別の安定したパターンに姿勢が移行するとき、必ず一瞬は不安定なNパターンの姿勢を挟むのですが、そこを律儀に捉えてゆくと、表記しなければならないポーズが倍になるので、カットしましょう。同時に、CパターンではなくA、Bパターンのどちらかであるという確信があるのなら、ほとんど肩の高さが平行に見えてもあえて自分でメリハリをつけるように心掛けましょう。


以上、『描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理』(著:篠房六郎)のプロローグ(前編)でした。同書はポーズマニアックス運営チームも、ほぼ全員が購入している本です。 Amazonなどで絶賛発売中です。
描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理 by 篠房六郎