模写しても上達しない人が、模写の前に決めていないこと
Posemaniacs運営・
模写を続けているのに、絵が上達している実感がない。そう感じている方に向けた記事です。原因の見つけ方と、今日から試せる直し方を説明します。
模写しても伸びないのは、あなたの努力不足ではない
「模写だけはずっと続けている。なのに模写元がないと、同じポーズひとつ描けない」。こう感じたことはないでしょうか。
これはよくある悩みです。『模写で上達!初心者のための人体ステップアップ講座』の講師・モグさんも、絵の練習を始めた当初はとりあえず人体を描いてみたが当然うまくいかず挫折した、と振り返っています。そこから独学で模写にたどり着き、模写を始めて1ヶ月ほどでそれなりの人物が描けるようになり、1年ほどで難しいポーズも描けるようになったといいます。
モグさんは、法律の知識がない状態から3年間で、司法書士・行政書士・宅建士の3つの国家資格を含む計5つの資格を独学で取得した経歴の持ち主です。その独学のやり方を、そのまま絵の練習に持ち込んでいます。
つまり、模写自体は上達に効く練習法です。伸びていないとしたら、原因は「模写をやっているかどうか」ではありません。模写の中の、ある一つの工程が抜け落ちている可能性が高いです。練習量が足りないのではなく、順番が違うだけです。
「とにかく模写しろ」が省略していること
SNSでは「模写だけでいい」「とにかく枚数を描け」という言葉をよく見かけます。この言葉自体は間違っていません。ただし、一つ大事な前提が省略されています。
模写とは、対象をよく見て、そこから得た理解をもとに自分の手で再現する練習方法です。この定義には、次の3段階が含まれています。
見る(対象を目に入れる)
理解する(対象の構造・比率・向きを把握する)
写す(理解した内容を自分の手で再現する)
「模写しろ」という言葉は、①見る→③写す、の2段階だけを指していることが多いです。真ん中の「②理解する」が抜けたまま模写を繰り返すと、線の形をなぞる作業にはなっても、次に応用できる知識は積み上がりません。
モグさんは、この「理解する」工程を自己評価の装置ととらえています。資格試験には点数という正解があり、自分の到達度を客観的に測れますが、絵にはそれがありません。ただ、模写は例外です。「模写であれば模写元という正解がすぐそばにあるので客観的に自己評価できます」。模写元という正解と自分の絵を突き合わせること自体が、観察と理解の練習になります。
モグさんの講座でも、写真模写について「写真から形やシルエット、構造、明暗、色彩など多くの情報を正確に読み取って、その読み取ったものを絵で表現しなければいけません」と説明されています。読み取る(理解する)工程を挟まずに写す作業だけを繰り返しても、観察力は育ちにくいということです。
模写には2種類ある——なぞり型と構造型
ここから、模写を2つのタイプに分けて考えます。
なぞり型模写とは、対象の輪郭線の形だけを目で追い、その形を置き換える模写です。線の見た目は似せられますが、なぜそこにその線があるのかは説明できません。
構造型模写とは、対象の比率・角度・面の向きを把握したうえで再現する模写です。線の位置に理由があるため、模写元がなくても大まかな形を思い出して描けます。
モグさんの講座の人体パート(写真をもとに図形化して描く回)でも、「図形化したラインをそのままなぞるのではなく、(中略)写真をしっかり観察して(中略)線を選択していきます」という進め方が説明されています。作業として輪郭を「なぞる」のではなく、なぞりそうになった瞬間に「観察して理解する」に立ち戻る、という意識の置き方です。
2つの違いを表にまとめます。
描く前にすること — なぞり型模写: すぐ線を引き始める / 構造型模写: 比率・角度・向きを確認する時間を取る
見ているもの — なぞり型模写: 輪郭線の形そのもの / 構造型模写: 輪郭の内側にある面の向きや構造
模写元を隠すと — なぞり型模写: 再現できない / 構造型模写: 大まかな構造なら思い出して描ける
描き終えた後の自己評価 — なぞり型模写: 「似てる/似てない」で終わる / 構造型模写: ズレた場所と理由を言葉にできる
次の模写への影響 — なぞり型模写: 積み上がらず、毎回ゼロから / 構造型模写: 理解が蓄積し、初めて見るポーズにも応用できる
自分がどちらの模写をしているかは、次の3つの質問で確認できます。
今描いた線について、模写元を見ずに「なぜここにこの角度で引いたか」を説明できるか
模写元を一時的に隠しても、そのパーツの大まかな向きを思い出して描けるか
描き終えた絵を模写元と見比べたとき、ズレた場所だけでなく「なぜズレたか」まで言えるか
3つとも「いいえ」なら、なぞり型模写になっている可能性が高いです。悪いことではありません。多くの人が最初はここから始まります。順番を1つ変えるだけで、次の模写から変わります。
今日30分でできる、構造型模写への切り替え
工程を大きく変える必要はありません。「見る」と「写す」の間に「理解する」を1つ挟むだけです。手元にある写真かイラストを1枚使って、次の手順を試してください。
描く対象を1つ決める(描きかけの模写元でも、新しい写真1枚でも構いません)
描き始める前に3分、対象を見るだけの時間を取る。輪郭を目で追うのではなく、「関節はどちらを向いているか」だけを確認する
輪郭線から描き始めず、まず関節にあたる位置に点を打つ
点と点を、面の向きを意識しながら線でつなぐ(10〜15分)
描き終えたら模写元と見比べ、ズレた場所と、その理由を1行でメモする(5分)。ズレが分かりにくいときは、描いた絵を模写元に重ねるか、左右反転して見比べると、ゆがみがはっきり見えます
合計30分以内でできます。輪郭を追う代わりに関節の向きを意識するだけで、同じ模写でも「理解する」工程が入ります。1回で完璧にできる必要はありません。先ほどの3つの質問に少しでも答えられるようになれば、模写の質は変わり始めています。
続けるのが苦手な人へ。モグさんは「独学は怠けようとする自分との戦いなので、いかにしてやらざるを得ない状況を作るかというのがとても大事です」と言います。意志の強さで乗り切ろうとするより、続けざるを得ない仕組みを先に作るほうが現実的です。
まとめ
模写しても伸びないのは、練習量ではなく「見る→理解する→写す」の理解する工程が抜けているケースが多い
なぞり型模写は輪郭の形を置き換えるだけ、構造型模写は比率・角度・向きを理解してから再現する
自分の模写がどちらかは、模写元なしで説明・再現できるかという3つの質問で確認できる
今日は輪郭でなく「関節の向き」だけを意識して、30分で1枚を模写してみる
この記事は『模写で上達!初心者のための人体ステップアップ講座』(講師: モグさん)の内容をもとにしています。