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ポーズを決める「立ち直り反応」-『ポーズの定理』プロローグ(前編)
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ポーズを決める「立ち直り反応」-『ポーズの定理』プロローグ(前編)

本記事は書籍『描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理』の抜粋記事です。

漫画家の篠房六郎先生が、研究をかさねた美しいポーズの定理について、基本理論を説明するプロローグとチャプター1をご提供いただきました。


PROLOGUE - 立ち直り反応

本書の最重要キーワード「立ち直り反応」とは何か、それがどのように無意識にポーズに影響するのか説明します。

ポーズを決める「立ち直り反応」

人体各部を描けるようになったとしても、その各部のパーツがどのようにひねられ、傾き、連なるかということを把握しなければ、躍動感のある、自然な人体のポーズを描くことは出来ません。

上のイラストは、人体各部のパーツの立体的なひねりを一切気にせず描いたものと、意識して描いたもので、仕上がりの差はごらんの通りです。

ちゃんと描いているのに、何だか上手く見えない絵の特徴は、全ての部位がなるべく画面に対して平行に(描き慣れた角度だけで)良く見えるように描かれていて、手前に来たり、奥まったりしてよく見えない(見慣れない)角度のものはなるべく排除していることです。

見慣れない角度のものを描くのも、部位を丸ごと省略するのも、実は強い根拠と目的意識が無ければできないことなので、初心者の人はつい避けてしまいがちですが、本書によってその理論的根拠と、自信を与えることができれば幸いです。

人体各部の傾きやひねりは、基本的に立ち直り反応によって決定する

立ち直り反応の定理1

図1のように、関節の動かない人形を斜めにすると、すぐそのまま倒れ込んでしまいます。

しかし人間、人体は少しぐらいバランスを崩しても図2のように倒れないよう姿勢を維持します。

これを姿勢反射、または立ち直り反応と医学的に言うそうです。

関節の動かない人形はそのまま倒れてしまう

立ち直り反応は脊髄反射のような、完全に意識が無くても動くものではなく、半無意識に脳の一部を使って行われるもので、意識を失ってしまうと途端にバランスが崩れて倒れてしまうのは、皆さん覚えがあることでしょう。

立ち直り反応ではバランスを保つために頭部(頸椎)、腕、背骨(腰椎)、股関節の各部がそれぞれ半無意識に独特の稼働をするので、その組み合わせによって生まれる姿勢は何パターンにもなります。

しかし、そのパターン数は無限ではないので、数多くのポーズを分析、分類していくといくつかの共通した「型」があり、人間は半無意識にその中からバランスの良い「型」を選んで、効率を最適化しているということも分かって来ました。

人間は反射的に、倒れないようバランスを整える

立ち直り反応は、不安定になるか、衝撃を受けることによって、より強まる

立ち直り反応の定理2

立ち直り反応を強く引き出すトリガーは不安定な姿勢(後述するCパターンや型無しの姿勢)になるか、衝撃を身体に受けることです。

図3のように、尻もちを突いて全身に衝撃を受けたとき、人体は半無意識でバランスを立て直すために一定の「型」に沿った姿勢を取ります。

尻もちをついて転んだポーズ

図4のように完全に意識を失って倒れたときは、立ち直り反応が起きないので、全く違った形となります。

単に意識を失ったポーズ

そして、不安定になればなるほど立ち直り反応が強くとなるのと同じく、身体に受ける衝撃が強くなればなるほど、立ち直り反応は強くなります。

例としては下図のサッカーの技で、普通に立った状態からボールを蹴る一軸のキックに対して、あえて斜めになりながら、片足で軽くジャンプをして跳び込む二軸のキックでは、その分衝撃を受けて立ち直り反応が強く起こり、キック時のフォームがかなり変わったものになっているのが観察できます。

一軸のキック

二軸のキック

頭部(頸椎)の立ち直り反応

バランスを保とうとするとき、人は後頭部を左右で上がっている方の肩に寄せる

頭部の定理

図5は斜めに傾いた人体の図で、図6はそこから頭部を肩の上がっている右側に寄せたものです。

赤い点線は頭頂部から垂直に地面に下ろしたおおよその重心を表す補助線で、両足が均等に接地しているときは正中線を、片方が体重のかかった軸足となっているときは、この補助線が軸足の近くを通るようになると姿勢が安定します。

図6を見ると頭部のこの動きがバランスを保つのにいかに効果的であるか分かると思いますが、なぜ「後頭部」という条件がついたかというと、図7で示した通り、頭部全体の重心が後頭部に寄っているからです。頭部は特に重い身体の部位で、動きの発端となることも多く、図8のように床のものを拾おうとするときは、後頭部を下がった方の肩に寄せて、意図的にバランスを崩して上半身を倒し、またそこから立ち直るときは図9のように後頭部を上がった側の肩に寄せて、バランスを安定させるなどしています。

股関節の立ち直り反応

体重の乗った、軸足側の骨盤は自然と上がり、反対側は自然と下がる

股関節の定理

左右どちらかの足に重心が偏るとそれがトリガーとなって、股関節が稼働し、図11のように軸足側の腰の方が高く上がるように自動的にバランスが調整されています。

股関節付近の中殿筋は加重されると(または連なった筋肉に上から引っ張られると)緊張するので、軸足側は曲がりにくく、反対側は曲がりやすくなるのでこのような形となります。

腰椎の立ち直り反応(A、Bパターン)

腰椎はそのときの重心や傾きによって、肩と腰の位置関係をバランスの良い型(A、Bパターン等)になるよう自動的に調整する

腰椎の定理A、B

図11では股関節の稼働のみを見せるために、体軸をあえて真っすぐに伸ばして描いていましたが、実際は骨盤が傾くとそれがトリガーとなって腰椎が立ち直り反応を起こして稼働します。

軸足と反対側の脇腹が開くように腰椎を稼働させると図12のように背骨が反った状態でバランスが安定し軸足と同じ側の脇腹が開くように腰椎を稼働させると図13のように背骨が前屈した状態でバランスが安定します。

分類上図12のようなポーズの型をAパターン、図13のような型をBパターンと以後呼称します。肩と腰の辺りにある上向きの矢印の記号は「こちら側の肩や腰が上がっている」という事を示しています。

腰回りの部分の背骨、腰椎は、前後左右に水平回転もする特に可動性の高い関節で、人体のバランスを保つ上で特に要となる部位です。

もちろん任意で自由自在に動かせる関節ではありますが、バランスを崩したり、衝撃を受けたりすると、自分でも気づかない内に自然とバランスのいい姿勢をとっていた、という覚えは皆共通してあることでしょう。

それは腰椎が半無意識的に安定した「型」を選びとっているからで、その型にはA、Bパターンの他にもこの後説明するCパターン、Dパターンも含まれます。


以上、『描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理』(著:篠房六郎)のプロローグ(前編)でした。同書はポーズマニアックス運営チームも、ほぼ全員が購入している本です。

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描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理 by [篠房 六郎]
「描きたいものを理論でつかむ ポーズの定理」by 篠房六郎