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厚塗りが「のっぺり」する人は、色ではなく筆の方向を疑う

厚塗りが「のっぺり」する人は、色ではなく筆の方向を疑う

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厚塗りで色を重ねているのに、なぜか絵がのっぺりして見えてしまう方向けの記事です。

原因は色選びの技術ではなく、ブラシを動かす向きにあります。この記事では、その理由と、今日30分で試せる練習を1つ紹介します。

なぜ描き込むほどのっぺりするのか

色を重ねてなじませる作業を続けるほど、面と面の切り替わりが消えていきます。これが「のっぺりする」の正体です。

厚塗りは、色を上から重ねてなじませていくものだと思われがちです。影をぼかし、境目を溶かし、グラデーションを滑らかにしていく。

ところがこのやり方だけを続けると、途中で「あれ、元はどんな形だったっけ」と自分でも分からなくなっていきます。境目を溶かせば溶かすほど、面と面の切り替わりが消えていき、結果として絵全体が平坦に見えてしまいます。

厚塗りレシピ講座の桐ヶ谷真さんも、厚塗りを始めた当初は同じ壁にぶつかったと話しています。色を置いて重ねていくやり方で描こうとすると、形が決まらず、色も濁っていく。「なぜだろう」と悩んだ経験があるそうです。あなたが悪いのではなく、色を重ねてなじませるという工程そのものに、形を崩しやすい性質があります。

「とにかく塗り重ねろ」は何を省略しているのか

「厚塗りは塗り重ねが命」というアドバイス自体は間違っていません。ただし、何を基準に重ねるかが省略されています。

色の濃淡だけを頼りに重ねていくと、なじませる作業がゴールになってしまい、面の切り替わり(どこからどこまでが同じ向きの面か)という判断が抜け落ちます。判断基準がないまま手数だけ増やすと、絵は情報量が増えても立体感は増えない、という状態になります。

立体感は何で決まるのか

立体感を決めているのは色を重ねた量ではなく、ストローク(筆の運び)が面の向きに沿っているかどうかです。

面とは、光の当たり方が変わる境目で区切られた、立体を構成するひとつながりの平らな部分のことです。

ハンバーガーで言えば、バンズの上面と側面は光の向きに対して傾きが違うので、別の面になります。

ストローク(筆の運び)とは、ブラシを一度動かす際の軌跡のことです。

TCG絵師直伝の厚塗り練習法(ハンバーガー編)のおかゆうやさんは、質感の描き込みについて「面に沿ってブラシを入れていく」「丸みを出すには、この面を意識しながら塗り広げる」という考え方を繰り返し使っています。色をぼかしてなじませるのではなく、面の向きに沿ってストロークを置いていく。さらに、面と面の境界線をきゅっと締めるだけで立体感が出る、とも述べています。

つまり、厚塗りの立体感は「どれだけ色を重ねたか」ではなく「ストロークがその面の向きに沿っているか」「面の境界線がどれだけはっきり残っているか」で決まります。描き込み量を増やす前に、この1点だけ意識を変えると、同じ手数でも見え方が変わります。

ちなみにおかゆうやさんの練習法は「30分で1枚を仕上げる」という時間の制限を核に据えています。時間を絞ることで、なじませる作業に逃げる余裕をなくし、面の判断を先にせざるを得ない状態を作っているとも言えます。

用語の整理:2つの塗り方

  • やっていること — 塗り重ね型: 影の輪郭をぼかし、色をなじませる / 面で置く型: 面の境界線に沿ってストロークを置く

  • 判断基準 — 塗り重ね型: 色の濃淡・滑らかさ / 面で置く型: 面の向き・境界線の位置

  • 起きやすい失敗 — 塗り重ね型: 元の形が分からなくなり、のっぺりする / 面で置く型: (同じ手数でも)立体感が残りやすい

  • 手が止まりがちな瞬間 — 塗り重ね型: 「もっと自然に」を追い続けて際限がなくなる / 面で置く型: 面の切り替わりがどこか判断に迷う

どちらか一方だけが正解ではありません。ただし、のっぺりで悩んでいる場合は、なじませる作業に入る前に「今どの面を塗っているか」を先に決める、という順番に変えるだけで結果が変わります。

今日30分でできること

いきなり人物やモチーフ全体で試すと、判断すべき面の数が多すぎて迷子になります。まずは単純な形で、面を意識する感覚だけをつかむ練習をします。

  • 球体か円柱を1つ用意する(写真でも、実物でも可)。光源の向きを1つに決める。

  • 明るい面・中間の面・影の面、大きく3つの面に分けて、それぞれの中で1色だけ置く。この時点では境界をぼかさない。

  • 各面の中だけで、ストロークをその面の向きに沿わせて塗り広げる。面をまたいでなじませない。

  • 最後に、面と面の境界線だけを少し引き締める。ぼかすのは、境界線の存在が消えない範囲にとどめる。

  • 一歩引いて全体を見る。3つの面がそれぞれ別の向きを持って見えるかを確認する。

なじませるのは最後の最後、境界線の存在を消さない範囲だけ。この順番を守るだけの30分です。

まとめ

  • のっぺりする原因は色選びではなく、色を重ねてなじませる作業を先にやってしまい、面の切り替わりが消えることにある

  • 面(光の当たり方が変わる境目で区切られた平らな部分)の向きに沿ってストロークを置くと、同じ手数でも立体感が残る

  • 面と面の境界線を締めるだけでも立体感は出る。なじませるのは境界線を消さない範囲にとどめる

  • 今日は、球体か円柱を1つ、3つの面に分けて塗る30分練習から

この記事は「厚塗りレシピ」および「TCG絵師直伝の厚塗り練習法〜ハンバーガー編〜」の内容をもとにしています。

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