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キャラクターの内面をポージングで表現しよう 『キャラクターを深掘りする』

キャラクターの内面をポージングで表現しよう 『キャラクターを深掘りする』

本記事は書籍『さいとうなおきの超もったいない!イラスト添削講座』の抜粋記事です。
イラストレーターのさいとうなおき先生が「キャラクター」の視点で添削し「イラストを上達させるテクニック」を解説したいくつかのページををご提供いただきました。


お悩み相談2: 見栄えがせず、見た人の心を動かせない!

相談内容: この少女は、中3の「梓」というオリジナルキャラクターで、「世間的に許されない恋を成就させようとしているけれど、たまに切なくなる」という心情を描きました。かけた時間の割に見栄えがしなくて、どうしたらもっと心地よいと思ってもらえる絵になるでしょうか?(P.N.あまねさん)

BEFORE

(P.N.あまねさん)

GOOD!

  1. バツグンに色がきれい!: ピンクと青って、ぼくもすごく好きな組み合わせで、まずそこに目を奪われました。
  2. 水面に映る桜の表現が上手い: 水面部分にちょっとピンクを混ぜることで、水に桜が映っている様子が分かります。画面に深みを与えて、とてもいいですね!
  3. キャラクターの気持ちを背景でイメージできる: 心象風景を描こうとしているところが意欲的! 表情も切なげで訴えかけてくるような目にグッときます。

NOBISHIRO

  1. パッと見た印象は「はかない」:「許されない恋なのに、成就させようとする」タイプの女の子ということですが、それにしては、はかなすぎる印象を受けました。
  2. 桜の存在感が大きすぎる:キャラクターと桜が同列で描かれているように見えるので、主張が激しすぎるかも。

キャラクターの内面をポージングで表現しよう

AFTER

【気まぐれ添削13】より
  1. 後ろにも波紋を描いて進行方向を示す
  2. 水面に映る桜の枝を控えめに描き添えて、画面を締める
  3. 画面の賑やかしに、水面に花びらと影を描き入れる
  4. 波紋をリアルに描くことでキャラクターの存在感が増す

POINT1 表現はポーズに表れる

あまねさんのコメントからは、「許されない恋を成就させようとする女の強さ」のようなものを表現したいのかなと思いました。しかし、ふわりとした立ち方で上半身も画面左に移ろうようなポーズが、その表現したいことと上手く噛み合っていません。梓さんの強さを表現するために、しっかりと地に足をつけて、己の意志で進み、その手で未来をつかみ取る!というポーズにすれば、表現したいこととキャラクターのポーズ・内面がリンクして、見た人にとって共感できる=心が動く絵になるはずです。

「つかみにいく」意志を手に込める: 許されざる恋を成就させようとするキャラの内面を表現するため、手を上へ突き出すように変更。元絵は腕を伸ばしているだけに留まっているので、あきらめているように見えていました。ほしいものをつかみとろうとする、画面に向かってくる感じがしっくりきます。
足の方向で意志の強さを表現: 手を画面の左側に伸ばしているのに、つま先は右向きに。この部分から「自分の意志と無関係に流されている」雰囲気が感じられるので、足先が画面手前を向いて自分の意志で歩いてきたように調整。
髪の方向で歩いている意志を表現: 後ろの髪の毛は上から見た面を描画すると、俯瞰の構図を強調できます。それに加え、キャラクターの進んできた方向に髪を流すことで、「ここまで自分の足で歩いてきた」という内面も見る人に伝わりやすくなります。

POINT2 桜(=脇役)の優先順位を下げる

桜の花びらが丁寧に描かれていますが、この絵で一番表現したいのは桜ではなく、女の子の内面。桜はあくまで彼女が求めるもの(=恋の成就)の象徴なので、もっと存在感を減らして脇役に徹してもらいましょう。

大きな色面(ピンク)に小さい色面(紺色)が含まれると、人間の目は小さいほうに視線を集中させます。桜(ピンク)の面積を広げることで、画面内での優先順位を下げます。
手前の桜でキャラの体を一部隠し、前景・後景を作ると画面に奥行きが生まれる。


桜にぼかしフィルターをかけて、キャラだけにピントが合うように変更すると、キャラクターの優先度が上がる。

POINT3 背景はランダム感を大切に

一定の細さで規則的に描かれている水面の波紋は、少し不自然。進んできた方向を表して構図にも影響する部分なので、ランダムに粗密を作って自然な形に仕上げましょう。水面の写真などを検索して参考にしてみてください。上部は思いきって光の反射で白く飛ばすことで、頭と背景にコントラストがつき、顔を強調できて効果的です。

存在感の演出のために足場を考える: 水の中を進むことは「誰も好まないような道を行く」という強いメッセージにつながるので、この作品の重要な要素。とはいえ、水面を歩く表現では幽霊のような存在感の無さを感じるので、水に足をとられながら進む絵にしました。

以上、『さいとうなおきの超もったいない!イラスト添削講座』(著:さいとうなおき)の抜粋記事でした。 Amazonなどで絶賛発売中です。
さいとうなおきの超もったいない!イラスト添削講座 by さいとうなおき