フィルムスタディとは? 映画の1カットから構図を学ぶ練習法と、描き写しで終わらせない決め方
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映画の1カットを描き写してみたら、時間ばかりかかって疲れて終わった。 何を見ればいいのか分からないまま、画面をなぞって終わった。 描き終えたのに、何が身についたのか分からない。
どれも同じ原因から起きています。 描く前に、そのカットから何を学ぶかを決めていないからです。
フィルムスタディとは、映画の何を学ぶものなのか?
フィルムスタディとは、映画の1カットを観察して描き、構図・明暗・色といった画面の設計をイラストに取り入れる練習法です。
学ぶ相手は、映画の絵そのものではありません。 その画面がどう設計されているか、のほうです。
だから、写真のように正確に写し取ることはゴールに置かれていません。
「そこまで厳密にフィルムスタディってめちゃめちゃちゃんと写真模写のようにするかというと別にそうではないんですけれどもある程度やっぱり丁寧にものを見るというのを鍛え方にもなるので」(紫蓮)
描くのは、丁寧にものを見るための手段という位置づけです。
では、その丁寧さを何に向けるのか。 ここが決まっていないと、手だけが動きます。
「フィルムスタディってどういうところを考えていけばいいのか学んでいけばいいのか描いていけばいいのかっていうところが曖昧だとやっぱり描いたとしても筋肉が鍛えられないって感じになってしまうので」(紫蓮)
そのまま、体をつくる話に例えられています。
「筋トレも特定の部位胸筋だったら胸筋を意識しながら筋トレしたりとかするのでこの絵とかも同じですフィルムスタディでもクロッキーでもどういったところを自分伸ばしたいかなって思うところが結構大事になってくるかなと思うので」(紫蓮)
学ぶものを決めていないと、描いても身につきません。 描き写して疲れて終わるのは、描く前に何を学ぶかを決めていないからです。
才能やセンスの問題ではありません。 描く前に決めるものが、1つ抜けているだけです。
なぜ題材が映画だと、構図の意図まで観察できるのか?
映画のカットは、1枚の絵として独立していません。 その前にも後にも、場面が続いています。 おかげで、その画面がなぜそう設計されたのかまで追えます。
「前後の状況が分かるんですよなのでより意味合いの強化っていうのが把握しやすくなります」(紫蓮)
同じ構図でも、前後の場面を知っていれば、なぜその大きさで、なぜその位置に人物が置かれたのかが読み取れます。 画面の設計と、その意図が一度に手に入ります。
光も同じです。 実写映画でも、映っている光が現実どおりとは限りません。
「人物を見せるための嘘のライティングというかに切り替えてるんですね」(紫蓮)
紫蓮さんはこれを嘘のライティングと呼びます。 現実には来ない光を、人物を見せるために足している。 実写の画面の中に、こういう作りものが見つかります。
学ぶものによって、描き方が変わる
学ぶものが1つ決まると、描き方も決まります。 構図・明暗・色の3つで、描くものと見るところが入れ替わります。
「画面構成とか構図を練習した場合はそもそも線だけでいいっていう場合もありますコントラスト感なんか見栄えとか派手さみたいなのをちょっと意識して書きたいなとかってなった場合はグレースケールそしてそもそも色彩構成を練習した場合はカラーって感じでさっき言った通りねどの部分を練習したいかによって全然やり方違うので」(紫蓮)
「画面構成、構図を練習したい場合→線で描く」「コントラストを練習したい場合→グレースケール」「色彩構成を練習したい場合→カラー」(講座スライドより)
構図を学ぶなら、線だけで写せば足ります。見るのは、画面のどこに何が置かれているかです。 明暗を学ぶなら、グレースケールで写します。見るのは、いちばん明るいところといちばん暗いところです。 色を学ぶなら、カラーで写します。見るのは、画面に使われている色そのものです。
構図を学ぶなら線だけ。左のカットから引いた線を、右のキャンバスへ写していく(講座の実演より)
明暗を学ぶならグレースケール。細部を描かず、暗い場所と明るい場所を先に置く(講座の実演より)
色を学ぶならカラー。画面から色を拾って置いていく(講座の実演より)
できたかどうかの基準は、決めた1つが写せたかどうかです。 構図を学ぶ日なら、線だけの1枚でその日の練習は成立します。
構図を学ぶなら、線だけで足りる
構図を学ぶ日に写すのは、線だけです。 見るのは、画面のどこに何が置かれているかです。
「僕が割と一番真っ先にやってるのは三分割の構図を見ようかなっていうのを結構よくやってたりとかします三分割って基本の構図でこういった画面を9等分して見る」(紫蓮)
画面を縦横に3つずつ区切って、9等分して見る見方です。 その区切り線の近くに何が乗っているかを追うだけでも、画面の設計が見えてきます。
明暗を学ぶなら、グレースケールで写す
明暗を学ぶ日は、グレースケールで写します。 グレースケールとは、色を使わず、白から黒までの明るさだけで描くやり方です。
最初に取るところは決まっています。
「まずは白と黒っていうのを取ってあげるめちゃめちゃ大事です」(紫蓮)
画面の中でいちばん明るいところと、いちばん暗いところ。 この2つを先に置いてから、間の明るさを埋めていきます。
色を使わない分、明るさの差だけが目に入ります。
色を学ぶなら、カラーで写して色を拾う
色を学ぶ日は、カラーで写します。 見るのは、画面に実際に使われている色です。 画面から色を1つずつ拾って、自分の絵に置いていきます。
これを続けると、自分の絵にも変化が出ます。
「フィルムスタディをやると何がいいかっていうとやっぱり映画とかで自分で色をとって置いていくのでだんだん自分の置く色みたいなのが自然と合ってくるんですね」(紫蓮)
拾ってみて初めて分かることもあります。
白に見えていた場所が実はそれほど白くない、という気づきが出てくる、と言われています。
白に見えていたところが、拾ってみると少し違う色だと分かります。
どれから始めるかは、自分の絵に付く感想で選べます。 「コントラストが低い」と言われることが多いなら、グレースケールから。 「背景とキャラクターが合っていない」と言われるなら、カラーからです。
3つに共通する見方も1つあります。 映っている人も、大きい図形として見ることです。
「基本的にフィルムスタディとかクロッキーとかそういった練習方法ってそうなんですけどあまり人として捉えすぎない方が良いかなという感じです基本的に人ではあるんですけど大きい図形として捉えてあげる」(紫蓮)
明暗を学ぶ回では、顔の作りや指の形より、大きな明暗のかたまりを先に取ります。
「デッサンに時間を取られるのではなくて色とか画面構成とかに時間を取りたいですよね」(紫蓮)
人物画の得意不得意とは切り離して取り組めます。
講座では、ここまでの見方が3つのポイントとしてまとめられています。
項目は「1.物を図形として形をとらえるビックシェイプ」「2.コントラストとカラーの観察」「3.構図の意図を読み取る」
上達への最初のステップ: 好きな映画の1カットを、明暗だけ写す
用意するのは、好きな映画1本と、いつも使っている描く道具です。
まず普通に1本観る
もう一度、画面を意識しながら観る
いいなと思ったカットを1つ選ぶ
そのカットをグレースケールで写す(15〜20分)
なぜよく見えたのかを1行書く(5分)
1と2を分けるのは、見る目に切り替えるためです。
「一旦見てじゃあもう一回次は画面を意識してみようかなっていうようなまず意識づけが結構大事」(紫蓮)
3で迷ったときの基準もあります。
「自分のいいなと思ったものを選ぶとかあとはコントラストが分かりやすいとサムネイルで分かりやすい構図を選ぶ」(紫蓮)
小さく縮めても構図が分かるカット、明るさの差がはっきりしたカット。 この2つが選びやすいカットです。
4の時間は、自分に合わせて動かせます。
「僕15分とか20分とかでやりましょうって言ったんですけどもっと全然倍の時間かけてもいいかなと思ってます」(紫蓮)
「ある程度30分とか決めてやってみるとかね」(紫蓮)
5は任意です。
「そもそもなんでよく見えるのかっていうのを文章で書いてみても良いのかなという感じがします」(紫蓮)
この練習で気にしないことがあります。 絵として仕上げることです。
明るさの差を見つけるところまでが、この1枚の役目だからです。 線をきれいにする作業は、ここでは出番がありません。
明暗から始めると、次に描く自分の絵で効いてきます。 白と黒が先に決まっていれば、人物や背景を塗るときの指標になります。
映画1本につき1枚で十分です。
まとめ: フィルムスタディは「何を学ぶか」を決めてから描く練習
フィルムスタディは、映画の1カットを観察して描き、構図・明暗・色といった画面の設計をイラストに取り入れる練習法。
描き写して疲れて終わるのは、才能やセンスの問題ではなく、決めるものが1つ抜けていただけ。
構図なら線だけで足り、明暗ならグレースケール、色ならカラー。学ぶものによって描き方が変わる。
最初の1枚は、好きな映画の1カットを明暗だけで写す。
映画は、観るたびに教材になります。 教材になるのは、何を学ぶかを決めて観たときです。
『映画で学ぶ、構図とイメージの伝え方:フィルムスタディ入門』
(講師: 紫蓮)はライブセミナー形式で、受講者が実際に描いたフィルムスタディに、紫蓮さんがその場で講評をつけています。
決めた1つを写せるようになった先が、そこにあります。
この記事は『映画で学ぶ、構図とイメージの伝え方:フィルムスタディ入門』(講師: 紫蓮)の内容をもとにしています。